3月25日と26日の2日間、名古屋のウインクあいちにて、日本産業ストレス学会の大会が行われました。
コロナ禍での開催ですので、ライブ、オンライン、オンデマンドという形で、現地に行かなくても参加できるという形式。私は、地元開催でしたので、仕事の合間に会場に行くという参加の仕方になりました。
今回の学会で、もっとも楽しみにしていたのが、岩瀬仁紀さんのお話です。大事な場面で抑えのピッチャーとして登場するというのは、毎試合スゴいことですので、どんな心理状態でいるのか、とても興味がありました。
究極のストレス状態についてお話しされましたが、中でも2007年の日本シリーズで、8回まで完全試合だった山井投手からの継投の話には引き込まれました。
極度の緊張状態でマウンドに上がった時、球場のファンたちの「なんで替えたんだ」というどよめきがスゴくて、マウンドに上がる時に「自分が投げていいのか」「自分じゃいけないんじゃないか」と初めて動揺したそうです。
それを5球の投球練習のうちに「まずは目の前のバッターを」という気持ちに高めていったとのことで、動揺を長引かせなかったのは、さすがとしか言い様がありません。常人には、なかなか真似のできないことでもありますよね。
そこには、大事な別の要素もあったようです。
マウンドに野手が集まってきて、アライバの二人が「当然、岩瀬さんでしょ」と言ってくれたことで、「自分が投げなきゃいけない」「自分でいいんだ」と思えるようになったと。岩瀬さん曰く、仲間から信頼されているという実感によって、自信を取り戻せ、切り替えができたのだそうです。
もう一つ、2008年の北京オリンピックのこと。中継ぎで登場したけれど、決勝点を取られ敗戦投手になったとき、帰国するのが怖かったそうです。実際、かなりの誹謗中傷の手紙(当時は、まだSNSがそこまで活用されていないない時代ですね)が届いたのだそうです。
しかし、それでも、戻るチームがあり、そこには自分の居場所があって、皆が待っていてくれた。これが支えとなって「ここで頑張ろう」という気持ちになれたのだそうです。「居場所がなかったら、辞めていただろう」とおっしゃっていました。周りが支えてくれるから頑張れるのだと。
このお話を聞いて、一流のアスリートも、働く人たちと同じなのだと思ったのです。仲間から信頼されている実感や安心して居ることのできる場所があること、これがなければ、心が孤立していき、仕事をする気力も失われてしまうでしょう。当然、よい仕事はできない・・・そして、周囲とも関係が悪くなり、という悪循環に陥ってしまいます。
改めて、よい職場づくりのためには、使い古された表現かもしれませんが「信頼関係」と「居場所感」が重要なのだと肝に銘じました。